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死から生きる

説教要旨(9月1日 朝礼拝より)
ローマの信徒への手紙 6:1-14
牧師 藤盛勇紀

 「では、どういうことになるのか」と、パウロは問います。この直前では、人間の罪の深さをはるかに超えるキリストの恵みの豊かさが語られていましたが、これがまた、人間の誤解や疑問が入ってくる隙ともなることを知っているのです。ある神学者は、「信仰の問題に、人間の屁理屈が入ってくる」と言いました。「私たちは罪人のままで恵みをうけたのなら、そのままでよいではないか」といった屁理屈。パウロはこの手紙の中で、そうした身勝手な理屈と繰り返し取り組んでいます。ここでも、直前で「罪が増したところには、恵みはいっそう満ちあふれました」(5:20)とパウロが言った言葉を捕まえて、「ああ、いいこと聞いた。それじゃあ、恵みが増すように、罪の中にとどまろうじゃないか」と言うひねくれた人がいるのは見えています。
 しかしパウロは、真正面から否定します。「決してそうではない」。この言い方が、何度も繰り返されます。キッパリと否定した上で、「あなたがたは知らないのですか」と問いかけます。「キリスト・イエスに結ばれるために洗礼を受けたわたしたちが皆、またその死にあずかるために洗礼を受けたことを」。洗礼を受けた事実は一体なんだったのか。洗礼という事実にこそ、私たちの新しい命への出発点があったではないか。「あなたがたは知らないのですか」。この問いに対応して、「キリスト・イエスに結ばれて、神に対して生きているのだと考えなさい」(11)としめくくられます。
 「考えなさい」とは、《計算に入れておく》という意味の言葉です。洗礼を受けて私たちはこういう者とされたのだ、だから常にそういうものとして生きよというのです。洗礼を受けた者は、キリストに結ばれ、キリストのものとされました。「わたしたちは洗礼によってキリストと共に葬られ、その死にあずかるものとなりました」とあるように、キリストと結ばれた者は、すでにキリストと共に葬られて死んだのです。
 すべての人にとって、死は最終最後の問題です。死は罪の報酬であり、厳しい現実です。しかし、その死はキリストが負われました。私たちが負わなければならない罪の行き先としての死を、神の御子が負ってくださった。それは、私たちが「新しい命に生きるため」です。命の主、命の源、命そのものである方が、その命に生きよと言ってくださいます。そのために、古い自分に死んで、新しい命に生きよと。
 キリストと結ばれたならば、もはや死の破壊力に脅かされることはありません。死はもはや効力を持ちません。死に支配されません。「キリスト・イエスに結ばれて、神に対して生きているのだと考えなさい」。
 私たちは《死んで、生きる》のです。神の前に「死んだふり」はできませんし、「生きたふり」もありません。「神に対して(神と共に)生きている」なら、それは本当に死んだのであり、真に生きているのです。
 もちろん、洗礼を受けたからといって、労苦も悩みもない人生となるわけではありません。様々な労苦、苦悩があります。でも、それらは決して無駄骨でも無意味でもないのです。「キリストに結ばれているならば、自分たちの労苦が決して無駄にならない」(1コリント15:58)のです。
 万物を造られた方から与えられた道を行くわけですし、それは、主は万事を益としてくださることを経験する道となります。神の子として生きるからです。私たちの経験することの全てがキリストにあり、全てが神に覚えられています。
 洗礼を受けているということは、今日も今日の悩みがあって、今日の労苦があっても、私はキリストのもの、神のものとして生かされている事実によって、一日を始められ、終えられるということ。同じように、人生を終えられるのです。洗礼は、そのような新しい命と人生のスタートです。
 

説教一覧(2019年度)

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2019.6.2
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