ホーム | 説教 | 説教(2019年度) | 祈れない時にも

祈れない時にも

説教要旨(12月8日 朝礼拝より)
ローマの信徒への手紙 8:26-28
牧師 藤盛勇紀

 祈ろうとしても、どう祈ればよいか分からない、言葉が出てこない。そういう経験があります。祈りとは、たとえば「信仰者の呼吸」だと説明されたりすることがあります。しかし、もしそれだけだったら、祈れないというのは呼吸停止、お終いです。
 あの最後の晩餐の夜、イエスの弟子たちはサタンによってふるいにかけられ、信仰が試されます。そして一人残らず失格者となってしまいました。「死ぬまであなたと一緒です」と言い張ったペトロも、その舌の根も乾かぬうちにイエス様を裏切りました。しかし、その信仰の失格者ペトロに対し、イエス様は予めこう言われたのです。「わたしはあなたのために、信仰が無くならないように祈った」。
 信仰が挫け、自ら主を裏切った者が、いったいどう祈れるでしょうか。裏切り者の弟子たちは、自分の祈りや信仰で立ち直り、立ち上がったか。そんなことはありません。主の祈りが、彼らを立ち直らせ、主の霊が、彼らを立ち上がらせたのです。
 パウロはもともと熱心な信仰の人、また優れた知性の人でした。誰よりも聖書に通じ、自分の信仰によって自分を律して生きる「非のうちどころのない者」と自分で言い切れました。しかし、その自分の正しさ、自分の信仰、自分の熱意を持って、十字架につけられたイエスを否定し、キリスト者を地上から抹殺しようと迫害し、殺していました。ところが、そんなある日、突然イエスの霊がパウロに語りかけます(使徒9:3-5)。まさに出会い頭で、生けるキリストと出会い、捕らえられてしまいます。
 イエスの弟子たちもパウロも、自分の信仰で立ち上がったのではありません。全てのキリスト者がそうでしょう。パウロは、実は自分は何も知らなかったと思い知らされました。「非のうちどころがない」と自信を持っていた「私の信仰」「私の知性」「私の誠実さ、経験、熱意」そんな「私の」何かは砕かれ、そんなものは「塵あくた」だったと悟ります。「私が」ではなく「主が」生きておられる。「主が」私を生かしてくださっていると知った、深い憐れみの経験、「恵みによって」生き始めた経験でした。
 「人の心を見抜く方は、“霊”の思いが何であるかを知っておられます。“霊”は、神の御心に従って、聖なる者たちのために執り成してくださるからです」とあります。「どう祈るべきか分からない」、そんな時、真面目な人ほど頑張ってしまいます。「祈ることを止めたら信仰の窒息だ。信仰者の死だ。祈らなければ」と。しかし、そんな自分は手放してしまうのがよいのです。イエス様は「自分を捨てよ」と言われました。「自分が何をしているのか知らない」私たちのために主は、「父よ、彼らをお赦しください」と祈ってくださっているのです。
 だから、祈れなくなった時も、祈れない自分に心を向けるのをやめたらいいのです。古い自分に死ぬことです。あなたを今生かそうとする主に心を向けて、自分を手放して、静まって主のなさることを見るのです。 パウロも、「主よ、あなたはどなたですか」と尋ねました。自分に心を向けたのでなく、生きて語られる主の言葉を聞いたのです。
 パウロが言おうとしているのはこういうことなのです。「あなたが祈ることもできず、呻いている時、主の霊が共に呻いておられませんか。それは十字架につけられたあの方ではありませんか。あの方が、あなたと共におられるのではありませんか」。
 それを私たちは知っているではないか、と言うのです。聖霊が注がれているとは、そういうことでしょう。私たちの口から発する祈りが絶えてしまう時、自分で神につかまっていられなくなってしまっても、神は、私たちを手放し給わない。その生ける神の恵みを発見している。それが、神の霊・聖霊を知っているということです。この事実以上に、確かなことはありません。

説教一覧(2019年度)

2019.4.7
神の愛の怒り
2019.4.14
正しい者は一人もいない
2019.4.21
私があなたと共に行く
2019.4.28
起きて神を呼べ
2019.5.5
行いによらず、恵みによって
2019.5.12
信仰によって現実を生きる
2019.5.19
イエスの血による贖い
2019.5.26
価を払わずに得よ
2019.6.2
父祖アブラハム
2019.6.9
聖霊の力を受けて
2019.6.16
神さまから与えられた家族
2019.6.23
主にある救い
2019.6.30
望み得ないときの望み
2019.7.7
希望は生まれる
2019.7.14
賛美の湧き出る泉
2019.7.21
神との和解
2019.7.28
罪人を愛する神
2019.8.4
神を誇る
2019.8.11
アンバランスな恵み
2019.8.18
恵みは満ちあふれる
2019.8.25
第二のスタート
2019.9.1
死から生きる
2019.9.8
上を見て生きる
2019.9.15
神から派遣されて
2019.9.22
賜物としての命
2019.9.29
きっぱりと捨てよう
2019.10.6
まず砕かれてこそ
2019.10.13
時が迫っているから
2019.10.20
絶望から生まれた信頼
2019.10.27
あなたの怒りは正しいか
2019.11.3
肉に死に、霊に生きる
2019.11.10
祈りの動機
2019.11.17
私たちは神の子
2019.11.24
神の子とされて
2019.12.1
神の子らよ現れよ
2019.12.8
祈れない時にも
2019.12.15
万事が益となる
2019.12.22
人となった神
2019.12.29
神の主権と深い愛
2020.1.5
神が味方ならば
2020.1.12
宿命をも破る主
2020.1.19
決して離さぬ愛
2020.1.26
神の友になりなさい
2020.2.2
愛されている確信
2020.2.9
主にあって
2020.2.16
同胞のための冒険
2020.2.23
血よりも濃く
2020.3.1
神の不思議な選び
2020.3.8
イエスを主とする仲間
2020.3.15
神の怒りと憐み
2020.3.22
生きて残された者
2020.3.29
救いは向こうから来る