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平和のレベル

説教要旨(10月13日昼礼拝より)
ローマの信徒への手紙 12:14-21
牧師 藤盛勇紀

 「あなたがたを迫害する者のために祝福を祈りなさい」「だれに対しても悪に悪を返さず」。こうした言葉は、主イエスの有名なみ言葉を思い起こします。「『目には目を、歯には歯を』と命じられている。しかし、わたしは言っておく。悪人に手向かってはならない。だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい」「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい」。あまりにもチャレンジングです。
 私たちは、この言葉をもってどう現実の世を生きることができるでしょうか。悪を受けても見逃せ、ただ忍耐せよ、いじめられても我慢しろということなのでしょうか。しかし、「人の良さが人の言いなりにならないようにすべきだ」とカルヴァンは言いました。それは、かえって人間の罪を増強させることになるからだと。たしかにそうことはあります。悪や罪には、無抵抗であるのでなく、戦わなければなりません。
 でもそこに、「目には目を、歯には歯を」となってしまう危険もあるわけです。私たち人間は自己中心ですから、法によって抑えられなければなりません。ただ、法によって憎しみの連鎖が断ち切れるわけでもない。これは、古代も現代も同じです。人間の根本問題は決して変わらないのです。
 それにしても、主のお言葉もパウロの勧めも、あまりにも現実離れしているように思われます。み言葉と私たちの具体的な生活をつなぐところは何なのでしょうか。
 3節にはこういう言葉がありました、「信仰の度合いに応じて慎み深く評価すべきです」。これは、信仰によって「思慮深く」という生き方です。それと同様のことが、18節の「できれば、せめてあなたがたは、すべての人と平和に過ごしなさい」ということになるでしょう。
 「できれば」は、「できる限りで」とも訳せます。そんなことでよいのか、と思われるかもしれません。しかし、これは無責任な態度ではなくて、信仰による態度なのです。万物の主であられるキリストが、終わりの時の裁き主、つまり救いの完成者として来られ、真の平和を完成してくださる。私たちは、このお方を望み見て、このお方を信頼しているからこそ、私たちは「できる限りで」なのです。
 私たちのためにご自分を献げられたキリストが来られる。その終わりから今が照らされて、キリストに仕えるようにして生きる時に、そこで開かれてくる可能性を見るのです。そして、今ここでのレベルを弁える。それが信仰による知恵です。
 一見、消極的とも思えます。しかしパウロは言います、「悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい」。負けるのでなく、勝つのです。「勇気を出しなさい。私は既に世に勝っている」と主イエスは言われました。キリストはすでに勝利しておられるので、負けることはありません。
 しかし、「悪に負けるかも知れない」となってしまったら、私たちが自分でなんとかしなければならなりません。悪を放っておけない、自分がやらなくては、人間が決着をつけなくては、と思うのです。悪に復讐せずにおれなくなります。しかしそれは、神無しの生き方です。「愛する人たち、自分で復讐せず、神の怒りにまかせなさい」とパウロは愛を込めて語ります。復讐したくなるのは、「神などいない」と思っているからです。なんと不義なことでしょうか。
 だから、私たちには十字架につけられた神、キリストが必要なのです。本当に復讐できるお方が、復讐をせず、むしろ憎しみと嘲りを受けて、人間に見捨てられて死んだ神の御子キリスト。このお方が生きておられるなら、私たちの進む道が紆余曲折でも、ある程度でも、そこに「できる限り」平和に、という道が、上からの可能性として見えてくるでしょう。
 

説教一覧(2015年度)

2015.4.5
おめでとう、主は生きておられる
2015.4.12
主がお求めになるもの
2015.4.19
主イエスとの旅
2015.4.26
自由を取り戻す
2015.5.3
人の力尽き、信仰が折れても
2015.5.10
父の約束を待ちなさい
2015.5.17
遣わされて生きる
2015.5.24
命を支える霊
2015.5.31
人に仕える主
2015.6.7
救いへの道
2015.6.14
キリストを知る道
2015.6.21
神様の愛
2015.6.28
この曲がった時代に
2015.7.5
主イエスを受け入れる者
2015.7.12
幸せの中心
2015.7.19
人生の優先順位
2015.7.26
収穫は多い
2015.8.9
和らぎある教会生活
2015.8.16
もう自問自答はいらない
2015.8.23
必要なものはただ一つ
2015.8.30
上から来た祈り
2015.9.6
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2015.9.13
あなたのともし火
2015.9.20
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2015.9.27
器の中身
2015.10.4
キリストの仲間として
2015.10.11
ここにも天のはしごは届いている
2015.10.13
平和のレベル
2015.10.25
あなたの豊かさ
2015.11.1
神の国を受け継ぐ者
2015.11.8
愛は神から
2015.11.15
大切なあなた
2015.11.22
何に備えて生きるか
2015.11.29
火を投ずる主
2015.12.6
今の時を見分ける
2015.12.13
あがめよ、わが魂
2015.12.20
はるばる来られた神
2015.12.27
忍耐して待つ神
2016.1.3
神の国は来ている
2016.1.10
狭い戸口から入れ
2016.1.17
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2016.1.24
神から招かれて
2016.1.31
創造の信仰
2016.2.7
宴会への招き
2016.2.14
旅立ち
2016.2.21
主の弟子として
2016.2.28
神の大きな喜び
2016.3.6
走り寄る父
2016.3.13
主イエスの沈黙
2016.3.20
光の子らの賢さ
2016.3.27
急いで行って告げなさい